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ブログ 津上俊哉
三菱マテリアル社が中国人労務者訴訟団との和解を模索している件について

環球時報の社説(仮訳)




  この問題については、日本で甲論乙駁、様々な議論があります。私個人は、たとえ原告の全てとの間の完全解決でないにせよ、和解を模索する同社の取り組みを強く支持する立場ですが、他の人に賛同を強要するつもりはありません。ただ、多くの人が知らない(と思われる)ことをお知らせしてご参考に供することはしてもよいのではないか・・・。

  当時の史実については、それこそ調べれば調べるほど、知らない事実が出てきて慄然とする思いですが、ここでポストするのは、先月「マ」社の和解模索の動きを報じた7月24日付けの共同電(中日新聞ウェブ)を受けて、いつも「中国の産経新聞」と揶揄されるタカ派媒体、環球時報が掲載した社説の仮訳です(訳責は私です。不正確かもしれませんがお許しを)。

  私はこの社説を読んで、中国の歴史問題に対する受け止め方の変遷に「あっ!」と言う思いでした。とくに、15年、20年前だったら、こんなことを書いたり口にしただけで、根深い歴史タブー感覚に「触雷」して「売国奴!」と罵倒されかねない微妙さを含んだ内容だと感じました。

  言論統制がきつくなる一方の昨今の中国で、環球時報はしばしば日中関係など微妙な内容について、思い切った社説を掲載します。そこに習近平政権の高いレベルから言外の支持を受けているからだろうと憶測する人もいますが、真偽は分かりません。ただ、こういう社説が中国で堂々と載るようになってきたことは、皆さんにも知って欲しいと思います。

「若し三菱が謝罪と賠償を行えば、歴史的な転換点になる」
(2015年7/24付け環球時報社説 仮訳)

  日本の共同通信社によると、第二次世界大戦中に中国労務者を強制労働させたことについて、日本の三菱マテリアル(以下の表示はすべて「三菱」)が、中国の被害者交渉団と全面的な和解合意をすることを基本的に決めたという。三菱は「謝罪」を行うとともに、基金の方式により3,765名の被害者各人に10万人民元の「補償」を行うという。以上が関係者談を引用した記事の内容だが、いまのところ三菱側は、このニュースを確認していない。

  もし三菱が共同通信社の報道のとおりに実現できるなら、日本企業が中国の被害者に対して行った最大の戦後補償になる。三菱は日本でも最も有力な企業であり、中国での知名度も高い。この挙は中日民間和解の「大事記」の意義を有する。

  中国の第二次世界大戦被害者による対日賠償請求の歴史は紆余曲折の途を辿ってきた。日本社会は全体として消極的な態度だった。日本政府の主張は「中国政府が賠償要求を放棄した以上、両国民間で改めて賠償を請求することは認められるべきではない」というものだ。この政府の態度がこれまで日本企業の賠償や謝罪の意欲の妨げになってきた。しかし、政府と民間被害者の要求は別々の事柄であり、法律の基本精神も日本の考え方を支持しない。

  仮に三菱が最終的に謝罪し、共同通信報道の「補償」を行うことになれば、日本企業にとって分水嶺的な進歩だ。客観的に見て、10万人民元は大金とは言えない。合計数億元にしかならない補償金は、三菱にとって「巨額」には当たらず、これで財務が困難を来すなどと言うことはあり得ないし、中国被害者と家族にとっても、この程度の金で何がどう変わるものでもない。しかし、当該企業が中国被害者との恩讐を正面から清算することには歴史的な意義がある。三菱がそうすることは、必ずや正しい途だと証明され、様々な政治的な意義を生むと同時に、三菱自身の利益にも合致することだろう。

  中国は長足の発展を遂げ、民間の富の蓄積も速い。戦争当時の被害者や家族がいま対日賠償請求を行うことの経済的な意味合いは小さくなる一方であり、皆はいまや「道理」の 問題を取り上げているのだ。当時の悲劇に責任のある日本企業が適切な賠償を行うことは、賠償金の金銭以上の価値を持つ。これがいま、中国当事者が求めていることであり、中国の公衆も目にしたい事柄なのだ。

  過去日本側では、謝罪と賠償がもたらす結末について過剰な心配と警戒があった。いったん認めてしまうと、後から後から賠償請求が湧いて出てくるだろうと恐れたのだ。加えて、日本は謝罪を道義的に崇高な行いとは見ずに、面目を失うことだと捉えた。日本政府と言わず民間と言わずこの傾向があったようだ。よって、韓国の慰安婦問題や中国の徴用労務者問題において、日本は賠償に代えて「援助」という形式を採りたがり、いつも紛糾の種を遺してきた。

  しかし、実際には、中国は発展を続ける過程で、日本を赦す社会心理条件を絶えず蓄積してきた。いま中国は過去のいずれの時代よりも、70年前の悲劇について日本と徹底した和解を行える可能性がある。日本人は中国の「トンデモ抗日ドラマ・映画」の氾濫に文句を言うが、実はこの現象に対しては、中国社会でも同様の反感がある。あの種抗日ドラマは中国のほんとうの対日感情を反映したものではないし、ああいう番組の氾濫は、中国でもしょっちゅう輿論から批判を受けている。

  遺憾なことは、中国社会が対日和解の心理を育みつつあるこの時に、日本では中国との交流を槍玉に挙げる右翼の攻撃が過激化していることだ。多くの中国人は「日本は中国と和解したくはないのだろうか、日本は歴史問題で中国に対抗することがいまのアジア太平洋で日本の利益を追求する上で有利だとでも考えているのだろうか」という疑問に捕らわれている。

  中日間の相互懐疑は何年か前に比べてかえって深まってしまった。中国から言うと、我々は、なぜ日本が是非を争いようのない領域で偏執的に中国と張り合おうとするのが分からない。近代以来、中国は日本を侵略したことはないし、いま日貨排斥をしている訳でもない。両国関係が良好とは言い難いこの時期にも、中国から大量の旅行者が日本を訪れて、大量のウォッシュレットを買い求めて経済貢献をしている。たしかに、中国の黄砂は日本に届いて迷惑をかけているかもしれないが、放射性物質を漏洩させた日本の原発事故だって、中国の沿海部を恐慌に陥れたのだ。我々が何か日本に失礼をしたとでもいうのだろうか。

  中日の和解は民間の和解が先行すべきだ。そして、そうするためには、先頭に立つ人が必要である。我々は、三菱の謝罪と賠償に関する共同通信社の報道が早く現実のものになり、両国民が目線を交わし合う歴史的な転換点になることを希望する。

(平成27年8月5日 記 原文中「抗日神剧」の訳は、当初アップ時の単純な「抗日ドラマ」ではなく、(超能力の持ち主みたいな主人公が日本兵をバッタバッタやっつける設定の)「トンデモ抗日ドラマ」の方が良いのではないかというご意見をいただき、そのように修正しました <(_ _)>)




 

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