かんぽの宿:不動産売却のルール作り議論 第三者委 (毎日.jp 2月25日)
「かんぽの宿」 の一括譲渡問題を受け、日本郵政が設置した 「不動産売却等に関する第三者検討委員会」(委員長=川端和治・元日本弁護士連合会副会長) の第2回会合が25日開かれた。・・・ 本格的な審議は初めてで、日本郵政グループの不動産についてヒアリングを実施するなど不動産売却のルール作りに向けた議論を始めた。
会合終了後、会見した川端委員長は、
かんぽの宿一括譲渡について、雇用の維持に特に配慮すべきだとする国会の付帯決議があるため、「不動産だけを高く売ろうとすることはできなかったのではないか」 と述べ、日本郵政の置かれた事情に一定の理解を示した。しかし、かんぽの宿が簡易生命保険加入者の資産でつくられた施設で、政府が日本郵政の株式を100%保有していることから、「収益性だけを考えて自由に (売却を) 判断してはいけなかった。配慮が必要だった」 とも述べ、公共性の観点から今回の一括譲渡は拙速だったとの考えを示した。
【中略】
十一、 職員が安心して働ける環境づくりについて、以下の点にきめ細やかな配慮をするなど
適切に対応すること。
現行の労働条件及び処遇が将来的にも低下することなく職員の勤労意欲が高まるよう
十分配慮すること。
民営化後の
職員の雇用安定化に万全を期すること。
民営化の円滑な実施のため、計画の段階から労使交渉が支障なく行われること。
労使交渉の結果が誠実に実施されること。
新会社間の人事交流が円滑に行われること。
決議の前後から判断するに、この 「職員」 は一義的には日本郵政の職員を指すように思う。「だから、かんぽの宿の職員の雇用維持はどうでもよい」 ということにはならないが、他方でこの決議があることを理由に、70施設全部の維持が論理的に導き出されるとも思えない。
「現行の労働条件及び処遇が将来的にも低下することなく」 との附帯決議文言を理由に、職場も雇用条件 (とくに賃金) も手をつけること罷り成らぬという議論が出てくるならば、再度国会に決議を求めたらよい。経済危機のまっただ中で選挙も近い今、そういう式の 「罷り成らぬ」 を主張する政党、議員が出てくるか見物だ (笑)。
職員の雇用条件といえば、附帯決議を探す途中で、こんなブログもあった(
かんぽの宿従業員の平均賃金600万円 ((片山)さつきブログ)。
真偽のほどは分からない。如何に 「かんぽの宿」 とはいえ、きょうび働く全員が平均600万円ももらっているはずはない。パートさんだって 「派遣」 だっているとは思うが、仮に 「正社員」 だけの話としても田舎で平均600万円の給与、と聞くと、やはり・・・と思ってしまう。これで70施設を全部維持せよ、現行の労働条件及び処遇を低下させるな、とやると、オリックス社が108億円の投資を回収するのは至難の業だっただろう。同社が大臣からボロクソ言われたのはご愁傷様だが、少なくとも同社の外国株主にとっては、本件譲渡が 「流れた」 のは朗報だろう。
上記記事に引用された委員長発言を読むと、政府100%保有の日本郵政なのだから、「収益性」 よりも 「公共性」 を重んずるべき、的なニュアンスが感じ取られる。でも、「公共性」 なんて言って見直しすると、やり直し入札の結果は総務大臣が 「安すぎる」 と批判した108億円をさらに下回って何のために見直し議論を始めたのか分からなくなってしまうのでは? それに、ここであまり追求してはいけないが如く語られた 「収益性」 のウラには 「国民負担」 問題があるのだ。第三者委員会にはまず、相反する諸々の要請のバランスを取るための原則のあり方、考え方を公開の場できっちり議論してもらうべきだろう。
(平成21年2月25日 追記)