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再浮上した 「重複建設」 問題 (追記というか訂正)

3回連載で最後にすると言っておきながら4回目ポストで恥ずかしいのですが、前回ポストの中に一点、追記というか訂正を要する点があることに気付いたので書いておきます。


再浮上した 「重複建設」 問題
(追記というか訂正)


  3回連載で最後にすると言っておきながら4回目ポストで恥ずかしいのですが、前回ポストの中に一点、追記というか訂正を要する点があることに気付いたので書いておきます。

  前回は 「資源配分の実権が政府に集中し過ぎている中国特有の状況が過剰投資問題を深刻化させている」 と述べた上で、地方政府と中央直轄国有企業の問題を取り上げたのだった。このうち地方政府については過剰投資問題への関わりが顕著なので上のように述べても問題ないと思うが、中央直轄国有企業も 「過剰投資を深刻化させている」 と単純に整理したのは適当でなかった。

  前々回取り上げた周其仁教授は過剰投資問題との関わりで産業を以下の3種類に分類している。
(1) すべて国が独占し、政府が価格を決めている産業では設備過剰現象はあまり起きておらず、中でも電力、石油の類いは折につけ 「モノ不足経済」 の状態がぶりかえしている。
(2)全てもしくは大部分を民営・私営企業が仕切っている産業では、市場への退出入も自由、価格も自由化されている。ここで深刻な 「設備過剰」 現象は見られない。
(3) 「設備過剰」 が最も深刻なのは、国有企業やら私営企業やら様々な所有制の企業が同時に立ち上がる産業であり、市場に参入すると簡単には退出できないし、政府が頻繁に干渉するような産業である。

  このうち中央直轄大国有企業が関わっているのは (1) と (3) だ。民営企業と国有企業が併存する鉄鋼業、電子・機械は (3) に該当し (6大過剰業種に数えられた風力発電や太陽光発電設備などもこれ)、この領域では政府に経済実権が集中しすぎていることが過剰投資問題にも影響を及ぼしていると言える。
  しかし、周教授も指摘するように、(1) の領域では過剰投資より独占の弊害 (コスト・価格の高止まり、供給不足) の方が顕著だと言うべきであり、国有企業の存在 = 過剰投資という単純な図式では整理できない。前回ポストはこの点を看過していた。
  「国家独占業種」 には上掲の電力・石油などエネルギーのほかに金融や通信も含まれるが、金融では4大商業銀行体制、通信では中国電信、中国移動、中国連通 (China Unicom) の3大キャリア体制が敷かれるなど、競争促進の観点から一定の (産業政策的?) 配慮がとられている ・・・ と書くと、今度は 「それなら石油だって中国石油、中国石化、中国海洋石油 (CNNOC) があるじゃないか」 と言われそうだ。特殊な領域を除けば国有企業が独占している産業でも 「体制内」 の競争体制はある程度成立しているのである。
  だとすれば、それにも関わらず競争が十分行われていないのは、会社の数といった業界構造というより、価格統制など強度の規制・政府管理体制が敷かれていることに由来すると見るべきかも知れないが、いずれにしても (1) の産業領域は過剰投資問題との関連が薄いので、ここで補足・訂正させていただく。ここ暫く 「官の官による官のための経済」 の問題がアタマを離れなかったので、過剰投資問題を論ずるに当たって、知らず知らず論点を混同してしまった。

  ちなみに、過剰投資が問題になっていないからと言って (1) の業種に問題がないということは全くなく、国家独占による競争不足、投資不足が三次産業育成や雇用拡大の不全を産んでいるという意味において、やはり 「官の官による官のための経済」 は改めるべきである。
平成21年10月14日 記




 

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