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ブログ 津上俊哉
FEDのZIRP政策について

景気の谷がどこまで落ち込むのかについては依然見当もつきませんが、夕べ発表になったFEDのZIRP政策を見て、底を打った後の回復過程の姿については、門外漢ながら少しイメージを得た気がします。


                       FEDのZIRP政策について
                         門外漢ながら思うこと


  奈落の底に落ちていくような実体経済の悪化が続く中、景気の谷がどこまで落ち込むのかについては依然見当もつかないが、夕べ発表になったFEDのZIRP(ゼロ金利政策+FEDのバランスシート拡張(債券市中買い入れ))政策を見て、底を打った後の回復過程の姿については、門外漢ながら少しイメージを得た気がする・・・数年後のバブル再来である。

  目下進む “Deleveraging” の破壊力は凄まじく、いまや “Credit Crunch” の津波が世界中の実体経済に轟々と押し寄せ始めた (4年前のスマトラ沖地震の映像を思い出す)。金融機関の体力がガタ落ちだから、“high leverage経営” は規制するまでもなく姿を消している。金融の 「爆縮」 を防ぐにはマネーを膨張させるしかない。ZIRP政策が採られなかったら、世界はほんとうに1929年サイズの大恐慌に行きそうな気配だから、“Bernanke-san” の選択はやむを得ないと思う。そして、基軸通貨国が始めたZIRPだから (少し時間はかかるが) 効き目はきっと凄いとも思う。
  ドルが世界中に “spray” されるだけではない。金利差逆転でドルを借りて円相手の “carry trade” が成り立つようになった。今までは “Yen carry trade” の巻き戻しで円高が進んだが、これからは “USD carry trade” の巻き上げで円高が進むだろう。私は 「円高論者」 なので、それもまた 「一局の碁」 だと思うが、国内では80円目指して進む円高を見て金切り声が上がり、日銀は総攻撃を受け、遠からずZIRPに近い線まで (先の利下げでいじましく留保した残り30basisを2回に分けて?) 追随利下げ・金融緩和を余儀なくされるだろう (注)。
  ユーロはどうか。ここでも “USD carry trade” の流れが 「巻き戻し」 から 「巻き上げ」 に逆転し、ユーロ/ドルが1.5→1.6とピークの1.7目指して再上昇するのではないか。ECBは相変わらず突っ張っているが、欧州経済は米国ほど “disclose” されていないせいで、あるいは米国ほど市場化が進んでいないせいで、米国ほど悲惨に見えないだけだと聞く。今後どんどん悪くなるうえに、進行するユーロ高で製造業が打撃を受けるだろうから、どれくらいの期間抵抗姿勢がもつか・・・

  ZIRPはこうしてほどなく世界中を覆う潮流になると予想する (新興国は実効金利ベースで明らかなマイナス金利になる)。その結果は世界大のバブル到来、「一国の手に負えなくなったグリーンスパン流を世界で再演する」 ことになるだろう。景気回復の兆候が見えたらマネー膨張のアクセルを戻すべきだが、それを試みる中央銀行は福井 前日銀総裁と同様、ボロンチョ言われるだろう。「引き締めの潮時だ」 と思うヒトが過半数を超えても、「まだ引き締めてもらっては困る」 という少数派がいるかぎり、賛否両論の声には 「声量」 の不対称が続く、それが民主社会の宿命だ。アクセル戻しはこうして遅れ、バブルがやってくる。

  何年先かは分からないが、そう遠からず世界サイズのバブルがまたやってくるとしたら、我々はこれからどのように身を処したらよいのだろう? 金融の隅っこに身を置く者の一人として思案に暮れる日が続きそうだ。「やっぱ、再生可能エネルギーか、今ならバカ安で投資できる・・・」 とか (笑)
平成20年12月17日 記

注:以前本ブログでは 「円高」 についても、そのメリットが日本の世論に 「損得両方ある」 式に反映されない理由として「消費者は上場していないから」 と嘆いた。そのときにした簡便な試算では原油価格を69ドル/Bと置いたが、いまはそれが45ドル、円の対ドルレートが85円になれば、日本が受ける輸入差益はトータルで20兆円を軽く上回るはず・・・日本経済は9月のリーマンショック以前に景気が十分すぎるほど落ち込んでいたが、その主犯は 「交易条件の悪化」 だったはずだ。いまは “Credit Crunch” 津波の時期だから、たとえ20兆円以上の差益を得ても、それでチャラパー → 景気回復という筋書きはとうてい期待できないが、他方みんなが悲観するほど悪くはならないと思うのだが、そういう意見はいっこうに出てこない。
  それは製造業以外にめぼしい上場企業がないという経済構造から日本が脱却できていないせいだ。経済界のリーダーも、そういう会社から広告をもらうメディアも、みな円安で利益を受ける利害勢力なのだから、いまの論調は良し悪し別に不思議ではないと思うものの、筆者は釈然としない。
  ただ、これまで筆者がいちばん気にしてきたことは、「円高シンドローム」 につけ込まれて、日本だけがしこたま米国債を買い込まされることだったが、それも昨晩のFEDのZIRPで事情が変わったのかもしれない。本家米国はおろか世界中がZIRP化するなら、「ええじゃないか、ええじゃないか」 あるいは 「踊らにゃ損々」 モード? つまりこの流れからは誰も 「逃げようがない」 ということです。




 

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