津上俊哉 現代中国研究家・コンサルタント

研究論文

中国地方財政制度の現状と問題点
-近時の変化を中心に-
2004/03/22
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概要

 中国の地方財政は計画経済時代、改革開放の時代を経て数次の変遷を経験してきた。移行経済の時代に採られた「財政請負」制は各地方の発展インセンティブを活用し、地域の改革開放に貢献したとの見方がある一方で、中央財政の困窮を招いた。次に来る「分税制」は当初基層財政の破壊を招き、下位の政府ほど、経済が未発達な地方ほど、公共サービス提供に重大な支障を来たすといった実態を招いたが、過去数年、当局は政府は教育、医療・衛生、社会保障・福祉など国民生活に密接に関連する行政分野で思い切った移転支出制拡大に乗り出した。
 その背景には、改革開放の進展とともに、新たな公共サービス供給へのニーズの高まりがあり、中国の「国のかたち」が変化しつつあることも感じられる。
 本稿はこれらの制度の変遷を振り返りながら、ときどきの地方財政制度に「財政連邦主義」の立場から論評を加えて、その理論の適用が及ぶ範囲を拡大するよう務めるとともに、今後の中国が目指す「国のかたち」も考察することを狙いとする。

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中国語版
(RIETI ウェブサイト 2004年3月22日)